自分とまわりを資産凍結から保護する家族信託の万全なやり方

不動産 信託 個人事業主

自分とまわりを資産凍結から保護する家族信託の万全なやり方

2024年6月10日

副業で稼いでいても、自分や身の回りに何かがあれば、すべてを中断してそちらに注力するということが普通に起きます。

このページでは、身の回りで資産凍結が起きた場合、どうなるかを考えておきましょう。

現在の日本の社会で、普通に感じるのが高齢化です。

65歳以上の高齢者の割合が「人口の7%」を超えた社会を、高齢化社会と呼んでいます。
さらに、高齢者が「人口の14%」を超えた社会を「高齢社会」と呼びます。

我が国、日本では、1995年の時点に高齢化率14.6%を超え、すでに高齢社会に突入しています。

健康でさえいれば、高齢社会などなんでもない

歳を取るのが嫌だと考えがちですが、人間は歳を取ってナンボのものです。

問題は、より良く歳をとれるかどうかで、年齢そのものは問題ではありません。

健康寿命がキモである

老人と青年の登山

貧乏でやる気をなくしたガリガリの青年より、引き締まって肉を二キロ軽く平らげ、三か月に一度は登山に挑む90代中盤の老人と、どちらが魅力的かは人それぞれ思うところあるはずです。

残された人生ずどれだけあるかを考えれば、ガリガリの青年の方がずっとマシだろうと思う人は多いとは思います。一方で、残っていると思っている時間が、実は中身が空虚だったりしたら、どうでしょう。

ここで、考えなくてはならないのが健康寿命です。

上のグラフは厚生労働省「平成22年完全生命表」から持ってきています。

日常生活が健康上の問題で制限されることなく生活できる期間が、健康寿命です。
平成22年の時点では、男性は70.42歳、女性は73.62歳が健康寿命になっています。

つるところ、人は長生きできるにしても、健康にものを考え、歩き、判断できる健康を維持できる期間は、本来の寿命よりほぼ短くなります。

人は、健康寿命の後は、自分と他者に迷惑をかけて生きることになることが多くなります。

グラフを読み解くと、平均で、男性は9.13年、女性は12.68年は死ぬにも死ねない、人に頼って生きる期間があるということになります。

その中でも面倒なのが、高齢者の5人に1人という認知症のケースです。

ここでは、認知症に着目して、身の回りで認知症を発した家族や身寄りが出た場合の、対応策を考えます。

認知症で困るのは、本人ではなくて周囲

認知症?

上の健康寿命ですが、例えばリウマチなどを患い、歩行に多少の不自由が生じても、頭さえしっかりしていればお金儲けはともかく、頭で楽しんだり判断したりすることができます。

他者に苦労をかけても、自分が喜ぶことができるので、それさえ相手に伝われば、他人の世話になってもコミュニケーションで何とかなります。

ところが、認知症の場合はこの一般ルールが通じません。認知症は意思能力が欠如した状態ですので、認知症本人が喜んだり判断しても、「何に対しての判断か、何に対しての喜びか」は、家族であっても判断つかないことが多いのです。

特に、家族が困るのが、認知症患者となった者の資産は凍結されるので、介護費や生活費は、誰かが(普通は家族が)肩代わりしなければならないことです。

もちろん、家族が支払った介護費は、認知症患者の死亡などにより相続が発生した場合、後々戻ってくる可能性はありますが、先ほどの例だと、平均で男性は9.13年、女性は12.68年(最長)の後ということになります。

認知症による資産凍結を考える

資産凍結!

認知症意思能力の喪失とみなされます。

認知症を発症した場合、年金や補助金等の申請(障害年金では1級~3級)のために、医師の診断書が必要です。

一方で、医師の診断書が出てしまうと、本人(認知症患者)の預金の引き出しや不動産売却、相続対策などができなくなります。

この状態が、資産凍結です。

認知症本人は、まとまったお金を動かせないので介護費・生活費に困窮し、介護者(認知症患者の家族)は介護費などを建て替える必要が出てきます。

軽い認知症だから大丈夫という判断も禁物です。

銀行を含め、ほぼすべての金融機関では、口座解約、引き出しのルールが厳しくなっています。

例えば、預金を引き出す際「本人が銀行の窓口へ来て」、「本人の意思確認が取る」ことが前提になります。

本人の印鑑などは前提がクリアしたの問題です。

資産凍結でできなくなること

  • 預金が引き出せない
  • 不動産が売却できない
  • 保険・証券の解約ができない
  • 生前贈与ができない

家族信託を活用する

資産凍結を防ぐ

自分を含めて、認知症になる恐れがある者、その家族がとれる対策はいくつかありますが、最も手軽なものが家族信託です。

自分(本人)の財産の「管理権限」を、 家族などに任せる(託す)ことで、認知症による資産凍結を防ぐ制度です。

端折って説明すると、認知症のリスクがある人(普通は家族・親)の財産の管理権限を他人(普通は家族)に任せ(託し)、その財産から本人の生活費や介護費を支出するというシステムです。

後から、詳しく説明しますが、管理する信託財産を管理人のために使うことはできません。

以下のような例はダメです。
「オヤジの財産を信託(家族信託)されたので、一部の財産を処分して、自分の新車購入費に充当した。」というものは信託違反になります。

家族信託は、実際は親のためにするケースが多い

信託というのは、人様の財産を管理するわけですから、普通は信用のある機関などが行います。信託銀行などが代表例です。

信託の中身は、いわゆる管理・運用です。目的に沿って大切な人や自分のために運用・管理してもらうことです。
信託された財産は形を変えてもいいので、不動産や宝石などを信託したら、特約がない限り、一旦金銭に変えてから、運用等されることが多いです。

もちろん、信託不動産を賃貸して、その賃貸費用を稼ぎ出すという信託もあります。

成年後見制度という方法もある

どうしよう・・・

本人が認知症を発症してしまったら、資産凍結はやむなしのため、家族は成年後見制度を利用することになります(法定後見制度)。

後見申し立ての費用は10万円程度、後見人への月額費用は6万円(2万円~)程度必要です。

成年後見制度を利用し、本人の資産から、本人の介護費、生活費用に充当します。

しかし、成年後見制度には4つばかり制約があります。

成年後見制度にかかる誓約

  • 家庭裁判所の関与必須
  • 一度使うと、本人死亡までやめられない
  • 制度を使う費用が毎月かかる
  • お金の使い道は極めて限定的に制限される

成年後見制度は、意思能力を失った人をカモにして、財産を巻き上げようとする輩から、本人(たとえば認知症患者)を保護する制度です。

そのため、法律そのものは強力で、制度の趣旨に反する財産行為を無資格者が行っても、取り消されてしまいます。

例えば、認知症患者の高額不動産を二束三文で売り払ったような場合、たとえ権利証に実印付きで売却済みであったとしても、取り消しができます。

きんとん
きんとん
ここで言う取り消しは、法律上の取り消しで、契約そのものか初めから無かったことになるという、きわめて強力な法律行為です。

また、一度認知症を発症すると、回復の見込みはほぼないため、本人の死亡までこの制度の支配(庇護)を受けることになります。これは、家族の意思で、本人のために何かをしてあげるという際、逐次、後見監督人の許可を取らなければならないため、煩わしい制度でもあります。(後見人が認めない支出ができないという意味です)

また、居住地を売却する際は、裁判所の許可が必要と、かなり厳格な制度です。

家族信託

家族信託のおやとこ

認知症による資産凍結から親を守る

家族信託と成年後見制度はどう違う?

家族信託と成年後見制度の違いについて、一番大きなものは、家族信託は本人が認知症などで完全に意思能力を失った後は利用できないという点です。

家族信託を利用するのに申し立てなどは不要で、契約書の作成費用だけです。

契約書はしっかり記載されていないと、信託の機能が上手く活きませんので、家族で話し合って(信託財産を差し出すものと運用する家族間で)、契約書は司法書士や弁護士などの専門の法律家に頼むのが常道です。

通常はすべて込みで、信託財産の1パーセントほどが費用になります。

家族信託は、月額費用などは原則不要です(必要なら費用を支払いサポートしてもらうことは可能)。

任意後見制度と成年後見制度はどう違う?

先ほど成年後見制度について説明しました。

成年後見制度は、その制度を少し緩くした制度です。

緩くできるわけですから、信託財産を差し出す人(本人)がすでに認知症を発症している場合は、この制度は使えません

まず、本人が認知症になっていない時に、任意後見契約を結んでおきます。

そして、本人が意思能力を喪失し(認知症になっ)たときに、任意後見監督申立てをして、任意後見人が就任しします。
できることは、本人の財産管理で、家庭裁判所で選任された任意後見監督人のもとで、任意後見人が行います。

きんとん
きんとん
後見監督人(後見人を見張る人)は必ずしも任命されるわけではありません。いない時もあります。

つまり、任意後見人(例えば家族)が財産を処分するときは、見張り役の任意後見監督人のチェックが入ります。

任意という意味は、本人(認知症患者)がまだ健康な時に、意志をもって、「後見人を誰にするか?」や「どの財産を管理させるか?」などを契約できるという意味程度で、決して柔軟な資産管理ができるわけではありません。

任意ですので、後見人(自分が意思能力を失ったときに財産の面倒を見てもらう人)を好きに定めることができます。
つまり、後見人は家族でなくてもよく、信頼できる友人や、アカの他人にでも構いません。また、後見人には弁護士等の特別な専門資格なども不要です。

制度を考えると当然ですが、任意後見が始まると本人が亡くなるまでずっと続きます。本人が意思表示できない以上、契約は継続し、月額で2~3万円程の報酬を支払う必要があります。

[家族だけでできるか?]任意後見制度と家族信託はどう違う?

字面だけでは、任意後見制度と家族信託は似ているように感じるかもしれませんが、多くの点で違います。

一言で言えば、家族信託は本当に必要経費を抑えたこじんまりとした契約です。もちろん、数百億の大金持ちでも利用できますが、財産が大きいと専門家名では書類作成(税務処理を含む)に困ると思います。

任意後見は、成年後見の簡易版(任意版)という性質もあるので、本人を代理する権限まであります。
家族を任意後見人に選んだとしても、その家族に問題があると裁判所が判断すれば、任意後見代理人が選任されます。
つまり、家族だけでうまくやるということができません。
また、たまたま任意後見代理人が選任されなかったとしても、「あの後見人、ヤベェゼ!」ってことになれば、裁判所に任意後見代理人をつけることを要求されることもあります。
性質上、任意後見が開始するのは、本人が意思能力を喪失した時、つまり本人が認知症などを発症した時に限られます。

一方、家族信託は実質民事信託ですので、財産と関係のないことまで代理できません。
本人が認知症を発症していなくても、信託は開始し、管理者は本人の財産を「本人のために」自由に処分することができます。

家族信託と身上監護

身上監護とは、生活・医療(治療や療養を含む)・介護など、身の回りのことに関する法律行為を行うことです。

具体的には、被後見人の住居の確保、施設の入所・退所・移転に関する手続き、被後見人の医療(治療)に関する手続き、病院への入院の手続きなどのことです。

身上監護は後見人が行うことができます。

家族信託の場合は、後見制度を利用しますので、信託財産管理人(受託者)には身上監護の権限は原則ありません。
受託者は、「介護施設入所に必要な契約や、病院の入院手続き」を代わりに手続きする権限がありません。

これは法律上のアヤで、実際は受託者は家族が就任していますので、家族としての立場を使って、介護施設入所に必要な契約などの身上監護をすることができます。

つまり、家族信託の受託者は家族ですので、事実上、身上監護ができるということになります。

家族信託

家族信託のおやとこ

認知症による資産凍結から親を守る

総まとめ

資産凍結を防ぐのさ

以上が家族信託、任意後見、法定後見(成年後見)制度の内容です。

成年後見制度は、すでに認知症を発症している場合に有効な制度で、任意後見と家族信託は本人が認知症を発症していない段階での契約が重要になります。

任意後見は成年後見とほぼほぼ同じことを、本人の意思がある状態で、契約で権限を定めることができる制度です。

後見人は家族でなくても、親しい人でも、アカの他人でも構いません。

一旦、後見が開始すると本人が死亡するまでずっと後見人に報酬を支払い続けることになります。

これに対し、家族信託は民事信託ですので、原則は家族が受託者(後見人みたいなもの)となり、本人の財産を管理します。

受託者という立場ですが、同時に家族でもある場合は、家族としての立場で介護施設入所に必要な契約等(身上監護)も行うことができます。

家族または自分が元気な時にできる契約が、家族信託ですので、まずはこちらをチェックしていくのが、後々の家族及び自分の資産凍結から、家族もしくは自分を守る強力な手段になります。

家族信託

家族信託のおやとこ

認知症による資産凍結から親を守る

-不動産, 信託, 個人事業主
-, ,